骨パジェット病
この章は医療関係者を対象として記載していますので一般の方には少し文章は難解です。
(1)これまでの取り組み
骨パジェット病については、平成24年度「重症骨系統疾患の予後改善に向けての集学的研究班」(研究代表者 大薗恵一)において、疾病の概要や疫学、症状等に関する研究がなされました。また、平成25年には日本骨粗鬆症学会が「骨パジェット病の診断と治療のガイドライン」を策定し、「骨Paget病の診断と治療ガイドライン委員会成果報告」として取りまとめられました。しかしながら、当時はまだ病態が未解明の部分も多くあったため、遺伝学的検査の結果等を踏まえるなどした客観的な診断基準を策定するには至りませんでした。
その後、国内外で骨パジェット病に関する研究論文が発表され、新たなエビデンスが示されつつあります。たとえば、近年では指定難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)で認められる遺伝子変異との関係性も示唆されるなど、骨パジェット病の病態が徐々に明らかになりつつあります。
本研究班では、こうした最新の医学的知見を踏まえつつ、今後、骨パジェット病が指定難病として妥当かどうかを検討する際に必要となる客観的診断基準案を作成することが可能かどうか、成人および小児の観点から、以下のメンバーで研究を精力的に進めています。研究の進捗については、随時、本ホームページに掲載する予定です。
<骨パジェット研究チーム>(50音順 敬称略)
遠藤直人(日本骨粗鬆学会理事長、新潟県立燕労災病院長 (整形外科))
大薗恵一(大阪大学小児科学講座 教授 (小児科))
澤井英明(兵庫医科大学病院 教授 (遺伝子医療部))
窪田拓生(大阪大学小児科学講座 准教授 (小児科))
(2)疾患の概要
骨パジェット病は、骨再生の正常なサイクルの乱れにより、骨が弱くなり、時に変形をきたします。高齢者に多くみられます。50歳未満の人は少ないですが、どの年齢でも発症することがあります。骨粗鬆症に対する治療に準じた治療法がありますが、特に持続的な痛みやその他の合併症をきたす可能性があります。
(3)臨床像
骨パジェット病は、単独~複数の骨が罹患する可能性があります。特に影響を受けることが多いのが、関節、骨盤、脊椎、頭蓋骨が含まれます。
一定の骨の鈍痛、関節の痛み、こわばり、腫れ、しびれやうずきなどがあります。また、症状がなく、骨粗鬆症に関連した検査で偶然にみつかることもあります。
(4)原因
骨細胞は古い骨が取り除かれ、新しい骨に置き換わります。これには 2 つの細胞が関与しています。破骨細胞 – 古い骨を吸収する細胞 と 骨芽細胞 - 新しい骨を作る細胞 です。
骨パジェット病では、破骨細胞に何らかの問題が生じ、破骨細胞が通常よりもはるかに速い速度で骨を吸収し始めます。そうすると全体として骨が全体として弱くなります。何がこれを引き起こすのかは明らかではありません。
(5)治療
骨パジェット病の特効薬的な治療法はありません。症状を緩和することはできます。
主な治療法
ビスフォスフォネート薬 – 骨再生を促進する
鎮痛剤 – イブプロフェンなど
理学療法、 作業療法、杖や靴などの補助器具
手術 - これは、骨折、変形、重度の関節損傷などの場合
カルシウム、ビタミンD